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第28回 骨粗しょう症の薬と治療

顎の骨の壊死に注意

質 問
骨折し、先日退院しました。
退院時に医師から「もし歯科治療をするなら、歯科医師にこの文章を渡して下さい」と言われました。文書には処方されている薬(骨をつくる薬)が書かれていました。歯の治療とどのような関係があるのですか?


回 答
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徳島県歯科医師会
奈良井 聡
第28回 骨粗しょう症の薬と治療
顎の骨の壊死に注意

骨粗しょう症による骨折が増加していますが、骨粗しょう症の治療薬の一部には歯科治療に際して注意が必要なものがあります。

治療薬は作用によって ▽腸からのカルシウム吸収を促進する薬 ▽骨の形成を促進する薬 ▽骨の吸収を抑制する薬の3種類に大別されます。この骨の吸収を抑制する薬のうち、ビスホスホネート製剤を服用されている方は歯科治療に注意を要します。しかし、ビスホスホネート製剤は骨粗しょう症の治療薬としては成績が良く、第1選択薬でもあります。

。非常にまれではありますが、ビスホスホネート製剤による治療中に、抜歯などの歯科処置や口腔内の不衛生などの条件が重なった場合、顎の骨の壊死がみられることがあります。ビスホスホネート系薬剤関連顎骨壊死(BRONJ)と呼ばれます。 初期の症状として ▽抜歯後の痛みがなかなか治まらない ▽歯茎に白色あるいは灰色の硬いものが出てきた ▽顎が腫れてきた ▽下唇がしびれた感じがする といったものがあります。そのような薬を服用されている方は、歯科受診時に歯科医師にその旨をお伝えください。医師と歯科医師の連携により、その発症を少なくすることができます。

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抜歯後にビスホスホネート系薬剤関連顎骨壊死を起こし
、歯茎に露出した顎の骨

例えば、一定期間の服用歴がある患者さんなら薬の一時休止を行った上での抜歯や、薬の一時休止ができない患者さんであれば発症リスクの少ないビスホスホネート製剤(構造式に窒素基を含まないものですが、骨粗しょう症への効果が弱くなり、服用回数が増えるなどの短所があります)に変更した上での抜歯を行うことなどです。

ただ、骨粗しょう症の治療の必要性があって処方されている薬ですから、患者さんご自身での勝手な休止は厳に慎むべきで、医師や歯科医師の指示に従ってください。どのように慎重に行ったとしても 発症する場合があります。特に副腎皮質ホルモン(ステロイド)や、がんに対する化学療法を行っている人は発症リスクが上がるようです。

この病気は2003年に最初に報告され、現在でも確立した治療法はなく、非常に難治性であるというのが現状ですが、次第に研究が進んでいます。不幸にして発症した場合には、病態に応じて手術療法や抗菌化学療法が効果を上げつつあります。 症状が8週間継続することが診断基準の一つとなっていますが、リスクが高い患者さんにおいては、それより早い時期に治療を開始することも場合によっては効果的です。

名称も現在はビスホスホネート系薬剤関連顎骨壊死となっておりますが、骨壊死という骨の血行が悪くなって発症する病気ではなく、細菌感染によって起こる骨髄炎の特殊型とする研究報告も多くなってきました。

つまり、口の中を清潔にすることにより、ビスホスホネート製剤を服用中の発症リスクを下げることができるということがはっきりしてきました。抜歯を余儀なくされる歯を減らすことが何より肝要です。あまり恐れず、ビスホスホネート製剤を服用されているのであれば、半年に1度くらい歯科医院の定期受診をし、予防を心掛けてみてはいかがでしょうか。