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第2回 歯周病と心臓病の関係

細菌が血管狭める作用促進

質 問
最近、狭心症の発作があり、循環科医院に通院していますが、歯周病が心臓病と関係があると聞きました。数年前、歯科医院で歯周病と言われ、定期的な受診を勧められたことがあるのですが、しれ以来、受診していないので気になっています。どのような関係があるのでしょうか。(50歳男性)


回 答
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徳島県歯制医師会
下村 学
第2回 歯周病と心臓病の関係
細菌が血管狭める作用促進

狭心症や心 筋梗塞に代表 される心臓病は、日本におる死亡原因の2位(2 0 0 9 年人口動態統計)でまさに命に関わる病気といえま す。歯周病が、その心瞳病のリスクを高めることは、さまざまな研究で明らかにされています。
狭心症や心筋梗塞は、動脈硬化が心臓の血管に起こり血管が狭くなったり詰まったりするものですが、この血管壁から歯周病原細菌が見つかることがあり、血管房狭める作用を促進すると考えられています。また、歯周病によっ て血液中のサイトカインという物質が増え、動脈硬化の進行に関与するとも考えられています。サイトカインは、炎症を伝承するホルモンのような物質です。
アメリカでは「 F l o s s o r D i e 」(フロスを使うか死ぬか)という言葉があります。「デンタルフロス(合成繊維で作った糸状の歯間清掃用具)を使うような丁寧な歯磨きをしないと、生死に関わるリスクが高くなる」という意味です。10年ほど前に、歯周病と、心臓 病や早産・低体重児出産との 関連が報告された際の、新聞 や雑誌の記事の見出しです。 れ以降、この言葉はアメリカにおける歯周病予防のうたい文句にもなっています。
デンタルフロスは、歯磨き の補助具としては歯間ブラシとともに代表的なものですが、残念ながら、日本での使用率はやや低いといえます。 歯周病の予防に、このような 補助具の使用は効果的ですので、歯科衛生士からのアドバイスを受けて、使ってみていただきたいところです。
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また、歯周病は心臓病だけではなく、さまざまな病気と深く関わっています(図参照》。これは、歯周病が歯の病気というより、歯肉の病気であるという特徴に理由があります。歯周病は、腫れた歯肉から産出されるサイトカインや、組織を破壊する酵素が過剰になることで、歯の周りの組織が自ら腫れていく病気だと表現できます。この歯肉の腫れている部分から、細菌だけではなく、サイトカインや酵素が血液に乗って全一身に運ばれていく可能性があるため、全身の疾患に影響があると考えられているのです。
8 0 2 0推進財団(東京)が発行している小冊子「からだの健康は歯と歯ぐきから~歯周病対策から健康力アップ」には、歯周病と全身の疾患との関係が分かりやすく解説されています。この小冊子は、同財団ホームページ〈http://www.8020zaidan.or.jp/〉内の「歯とお口の健康小冊子」のペlジに、印刷が可能なP D F形式のファイルがありますので、ぜひ利用してください。 歯周病を予防することは、心臓病をはじめさまざまな病気の予防につながります。
歯周病の予防は、患者自身の丁 寧なブラッシングに代表されるセルフケアと、歯科医院で行うスケーリング(歯石取り)に代表されるプロフェッショナルケアの両方が不可欠です。かかりつけの歯科医院での定期的な受診をお勧めする理由はここにあります。
糖尿病やメタボリツクシンドロームなどの生活習慣病の予防に、食事や運動といった 生活習慣の改善が重要である ことは、広く知られるようになりました。これにぜひ、歯と歯ぐきのケアを加えていただきたいと思います。