default_mobilelogo
 

第11回 口内炎と口腔がん

ザギザした境界は要注意

質 問
小45歳の主婦です。
舌の右横の部分が口内炎になって1週間たちますが、なかなか治りません。がんではないかと心配です。どうしたらいいですか?


回 答
p11-yasuda
県歯科医師会理事
安田 勝裕
第11回 口内炎と口腔がん
ザギザした境界は要注意

口内炎は小さくても、口の中では大きく感じるものです。また、しょうゆなどの刺激ぶつが染みてお困りのこととお察しします。口内とがんとの違いについて説明します。 口の中の粘膜に起こる炎症をまとめて「口内炎」といいます。口内炎にはいろいろな種類がありますが、アフタ性口内炎が一般的です。アフタ性口内炎は表面が白っぽく、浅い円形の直径1~数㍉程度の潰瘍で、周囲に赤みを帯び て強い痛みを伴います。一度に1個から数個できます。

口内炎は、口の中の粘膜であれば頬の内側や唇、歯ぐき、舌などどこにでもでき、乳幼児から高齢者まで幅広く発症します。ほとんどの口内炎は、1週間から3週間ほどで治りますが、つらい症状なので、発症しないように予防することが大切です。

予防は、口の中を清潔に保ち、硬い歯ブラシなどで傷つけないように気を付けます。規則正しい生活をしてストレスをためないように心掛けましょう。また、栄養バランスの取れた食事も大切で、特に、ビタミンB類やビタミンCを多く取るようにしてください。口内炎の治療には、口用の軟こうを使ったり、最近ではレーザーで治療する病院も増えています。

一方、口腔がんは多くの場合、表面がでこぼこした潰瘍として発見されます。口内炎との違いは次のようなものです。

p3
【左】境界が不鮮明でギザギザしていて周囲が盛り上がったり、硬いしこりになっている口腔癌
【右】境界が滑らかで、周囲に赤みがある口内炎(徳島大学口腔外科宮本教授提供) 


まず、周囲との境界の違いです。口内炎は境界が滑らかな円形や楕円形であるのに対して、口腔がんは境界が不鮮明でギザギザしています。また、口内炎は周囲に赤みがあるのに対し、がんでは周囲が盛り上がったり、硬いしこりになります。がんは口内炎よりも痛みが軽いことが多いです。最も注意していただきたいのは、3週間以上治らない口内炎は、がんの可能性があるということです。

口の中は見えるので早期発見できると考えがちですが、実際は、10~20%の口腔がんしか早期発見されていません。

▽口の中が痛い ▽口内炎か3週間たっても治らない ▽どこか分からないが出血がある ▽粘膜に発赤がある ▽粘膜に白斑がある ▽口の中にしこり、腫れがある ▽抜歯後が治らない ▽顎が腫れて入れ歯合わなくなった ▽喉に痛みや引っかかった感じがある ▽頬や舌が動かしづらい ▽鼻詰まりが片方だけある ▽しびれやまひがある ▽首のクリグリが3週間たっても治らない などの症状がある場合は、かかりつけの歯科医や耳鼻科の受診をお勧めします。

がんの疑いがあるなら、徳島大学病院など専門病院を紹介してもらいましょう。

口腔がんで亡くなる方は、体全体のがんで亡くなる方の2%程度にすぎませんが、30年前に比べと約倍に増加したと言われています。特に ①たばこを吸う人 ②飲酒の習慣がある人 ③合わない義歯や差し歯の刺激がある人 ④口の中が清潔でない人 ⑤鉄分、ビタミン不足⑥他の部位にがんができたことのある人は注意が必要です。生活習慣に気を付けることで口腔がんを予防するとともに、かかりつけ歯科医の定期的な受診をお勧めします。

県歯科医師会では口腔がん検診のシステムづくりに取り組んでいます。それぞれの歯科医師が定期的に研修・実習を行った上で、検診を実施し、がんを見落とすことなく、早期に発見するよう努めています。他のがん検診と同じように口腔がんの検診も受け、早期発見、早期治療しましょう。