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第10回 入れ歯を作る工程

患者に合わせて何度も調整を

質 問
友人の総入れ歯は良くかめるの に、私の入れ歯は時々外れるなどするため、歯科医院で新しく作ることにしました。私の顎は、入れ歯が安定しづらい形をしているようで、「型をとったり、かみ合わせや歯並びを確認したりするために、通院の回数がやや多くなりますよ」と言われました。入れ歯がすぐにできない理由を詳しく知りたいです。型をとってから、入れ歯ができるまでの工程を教えてください。


回 答
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徳島県歯科技工士会
秋山 佳弘
第10回 入れ歯を作る工程
患者に合わせて何度も調整を

入れ歯は、自分の歯が1本も残っていない場合の「総義歯」と、1本でも残っている「部分総義歯」の2種類に分けることができます。

支えになる自分の歯が1本もない総義歯は、口の中で安定させるために、総義歯の内面と歯茎やその周辺の粘膜が密着し、その間に適量の唾液が介在することが大切です。これは、水にぬれたガラス板を重ねると吸いついたようにはがれにくくなる現象と同じです。

総義歯を作るにはまず、既製の型枠を使って患者の口の中の型をとります。その型から患者専用の型枠を作り、もう一度、より精密な型をとります。人がしゃべったり、かんだり、飲んだりすると、舌や頬の筋肉が動き、それと連動してその周辺の粘膜も動きます。2回目の型どりは、粘膜が動いてもしっかり吸着し、がたついたり外れたりしない総義歯を作るための大切な作業の一つです。

こうしてとられた型に石こうを流し込か、固まると義歯を作るための模型ができます。次に、この模型に特殊な樹脂などで土台になるプレートを作り、このプレートに馬てい形のろうを付け、「咬合床」と呼ばれる入れ歯の原型のようなものを作製します。歯科医師は、この咬合床のろうの部分を温めて柔らかくし、削ったり足したりしながら患者さんの上顎と下顎の適切な位置関係を判断する「咬合採得」という作業を行います。

この後、人の顎の動きを再現できる特殊な器具「咬合器」に模型を取り付けて作業を進めますが、咬合採得は、咬合器に上顎と下顎の正確な位置関係を再現するため、また、人工歯を並べる位置や方向などを決めるために重要な作業です。

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【上】上顎の肢合床
【下】殴合器に装着した肢合床
模型を咬合器に装着した後、患者に適した色や形の人工歯を選択し、一定の法則に従って並べます。人の前歯は通常、上の歯が下の歯にかぶさった状態になっていますが、このかぶさる量と角度も総義歯の安定に大きく関係しますし、並べ具合によって若く見えたり老けて見えたりもします。

また、奥歯もかんだときにがたついたり、舌や頬の粘膜をかんだりする不具合が生じないよう、慎重に並べます。 並べ終えたものを「ろう義 歯」と呼び、歯科医師は、このろう義歯を実際に患者の口の中に入れて確認と調整をします。

これを終えると、人工歯だけを残し、仮床とワックスの部分を入れ歯専用の合成樹脂に置き換える「埋没・重合」という作業に移りますが、この作業の後では人工歯や歯並びを変えることが基本的にできなくなるので、ろう義歯での調整は患者さんの感想や要望も聞きながら入念に行います。

埋没・重合が終わると、埋没されている義歯を傷つけないように慎重に掘り出し、研磨をして完成です。しかし、患者さんによって条件も満足度も違いますので、ほとんどの場合、新しい義歯でしっかりかめるようになるまでには、歯科医院での微調整が少なくとも数回は必要です。

入れ歯は、消化器の一部となる大切なものです。日頃のお手入れはもちろん、月日の経過とともに歯茎が痩せるなど口の中の状態が変化し、痛みやがたつきなどを生じることもありますので、定期的な通院をお勧めします。