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第37 回親知らずの抜歯

抜歯の必要性で判断

質 問
先日、歯科医院に行ったところ、親知らずを抜いたほうが良いと言われました。知人が「抜くのに時間がかかって、抜歯後も腫れて大変だった。」というのを聞いて抜くかどうかを迷っています。親知らずの抜歯は、普通の歯と比べてなぜ大変な場合が多いのでしょうか。また、痛みがなくても抜かないといけないことがあるのでしょうか。


回 答
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徳島県歯科医師会
谷本 良司
第37回 親知らずの抜歯
抜歯の必要性で判断

確かに親知らずの抜歯に関しては、抜歯に時間がかかったり、抜歯後も腫れや痛みがあって大変だったという話をよく聞きます。時間がかかり大変な理由は、親知らずの位置と、萌出の仕方(生え方)に問題がある場合が多いからです。

私たちの歯は上下左右7本ずつ、計28本あれば全部揃っているとされています。現代の日本人は、食生活の環境が昔とは異なってきたため、顎の大きさがだんだんと小さくなってきています。最近の子供の歯並びを見ていると、顎が歯に対して小さいため矯正が必要なケースに遭遇することが多く、この28本もきれいに並ぶことが少なくなってきています。 ましてや親知らずは最後の8番目に生えてくるため、生えてくるスペースがない場合が非常に多く、歯が骨の中に埋まってしまっていたり、生える途中で止まってしまい、正常な位置や方向を向いていないケースが多くみられるわけです。

時間がかかる理由としては、解剖学的にも親知らずは一番奥にあり、抜歯するにも見えにくく、器具も入りにくいという難しさがあります。それに加えて、骨の中に埋まっていたり、中途半端に出ていたりすると通常の抜歯の方法では対応できません。そのために歯肉を切開したり、歯を分割したり、場合によっては骨を部分的に削ったりして抜歯をしないといけなくなるわけです。

また、下顎には「下顎管」と呼ばれる血管と神経が入った管があり、埋まっている親知らずが近接していている場合は、下顎管を損傷しないよう特に慎重に抜歯を行うのでどうしても時間がかかってしまいます。最近では、骨の中に埋まっていたり下顎管に近接しているケースでは歯科用CTを撮影し、歯の位置や形、下顎管との関係を3次元的に事前に正確に知ることで、より安全に抜歯できるようにもなってきています。

術後の腫れや痛みが出やすい理由としては、抜歯のために切開を行ったり骨を削ったりすることでどうしても出てきます。合併症を少なくするために、骨をできるだけ削らずに歯を小さく削り、分割して抜歯することを心掛けてはいますが、切開が小さいと術野が狭くなってやり難いですし、骨もある程度削らないと抜歯できない場合も多々あります。

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痛くなくても抜歯したほうがいいのか?というご質問ですが、主治医が抜歯の必要性があると判断したのであれば抜歯したほうが良いと思われます。親知らずが中途半端に出ている状態で虫歯になっていたり、親知らずが原因で隣接する歯が虫歯になっていたり、歯ぐきの周りが腫れていたりする場合は抜歯の必要があるのは理解できると思いますが、将来的にそうなる可能性が高いと主治医が判断した場合も抜歯したほうが良いと思います。また、親知らずが無理に生えることで、7番目の歯の根の部分に吸収が起こったり、かみ合わせが変わり歯列がずれてしまったり、顎関節症を引き起こしたりすることもあります。上の親知らずが生えているのに、下の親知らずがなかったり、またその逆のケースも抜歯が必要になる場合もあります。いずれにしても、主治医に相談されるのがよいと思います。

抜歯後は、すぐに患部を冷やすことで腫れが少なくなりますが、全く腫れないようにするのは難しいでしょう。お薬は決められた通りにきちんと服用するようにし、主治医の指示に従ってください。