第20回 妊娠期の口腔衛生
水や茶でこまめにうがい
質 問
妊娠4ヶ月です。つわりがひどく、歯磨きのできない状態が続いています。
口の中が気持ち悪くて歯茎がむずむずすることもあり、虫歯ができてしまうのではと心配です。どうすればよいですか。
口の中が気持ち悪くて歯茎がむずむずすることもあり、虫歯ができてしまうのではと心配です。どうすればよいですか。
回 答
徳島県歯科衛生士会
藤原 妙子
第20回 妊娠期の口腔衛生
水や茶でこまめにうがい
妊娠・出産すると歯が悪くなることがあり、昔から「子どもを1人産むと歯を1本失う」ともいわれていました。妊娠すると、体や口の中に変化が現れます。特に、つわりのひどい方は大変ですね。
つわりには▽吐きつわり(嘔吐物が胃液の混入した強酸性)▽食べつわり(甘いものを食べたくなったり、間食の回数が増えてだらだら食べたりする) ▽眠りつわり(唾液の分泌量が低下する)などがあります。その上、歯磨きもできないとなると、口腔衛生状態が低下し、口の中は極めて虫歯や歯周病が進行しやすい状態になります。
つわり時は、口を大きく開けたり、口の中に歯ブラシを入れたりするだけでも吐き気を催すものです。
歯磨きの際は▽歯ブラシはヘッド(ブラシ部)が小さく、柔らかいものにする ▽においの強い歯磨き剤は使わない ▽顔を下に向けて唾液を口にためない。 ▽奥から手前へ小刻みにかき出すように磨く など気をつけて下さい。
ほかにも、口を閉じて磨いたり、冷たい水を使ったり。どうしても歯を磨けないときは、こまめに水やお茶でうがいをし、洗口剤を薄めて使うのもよいでしょう。キシリトールガムでさっぱりさせるのも一つの方法です。 次に歯茎がむずむずするとのことなのですが、赤く腫れたり出血したりすることはないで
しょうか。歯茎からの出血が増えたという妊婦の声も聞かれます。妊娠性歯肉炎や妊娠性エプーリス(良性のできもの)など、妊娠中の歯茎のトラブルはよくみられます。
いろいろな大きさの歯ブラシのヘッド。
(上から)乳幼児仕上げ磨き用、コンパクトヘッド、通常のもの
歯周病菌には女性ホルモンの影響で繁殖するものがあり、女性ホルモンは歯肉の毛細血管に作用して歯周病の炎症を増大させるともいわれています。そんな女性ホルモンの分泌が、最も盛んになるのが妊娠期。さらに妊娠中はつわりの影響で、歯肉が炎症を起こしやすくなっています。
そして今、歯周病と低体重児出産や相談との関係が注目されています。歯周病に罹患した妊婦は、そうでない妊婦に比べて早産や低体重児出産の危険性が7・5倍高くなるという報告があります。歯周病による炎症で作られた物質が、血流を通して子宮に影響するためと考えられています。歯がうずいたり痛んだりするのはストレスですから、母体や胎児にとって好ましいことではありません。 その上、出産後は育児に追われ、なかなか歯科治療を受けられません。虫歯菌は人の口から別の人の口へ唾液を介して感染します。虫歯や歯周病を放置したままの口腔は細菌が多いので、つわりが落ち着いて安定期(妊娠5~7ヵ月)になったら歯科検診を受け、治療を済ませましょう。
歯科受診時は保険証と一緒に母子手帳も持参して、心配事は歯科医、歯科衛生士に相談してください。
お子さんの歯の始まりは、お母さんのおなかの中からです。妊娠2~3カ月で全ての乳歯の芽ができ、歯の質は妊娠中に決まります。栄養の過不足に気を付けて、バランスよく食事をとることが大切です。お母さんが口の健康管理を習慣づけることは、お子さんの虫歯予防にもつながります。家族で楽しい食卓を囲み、健康な歯で味わって食べる豊かな食習慣は、お子さんにとって、掛け替えのないプレゼントになるでしょう。無事出産されることを願っています。
つわりには▽吐きつわり(嘔吐物が胃液の混入した強酸性)▽食べつわり(甘いものを食べたくなったり、間食の回数が増えてだらだら食べたりする) ▽眠りつわり(唾液の分泌量が低下する)などがあります。その上、歯磨きもできないとなると、口腔衛生状態が低下し、口の中は極めて虫歯や歯周病が進行しやすい状態になります。
つわり時は、口を大きく開けたり、口の中に歯ブラシを入れたりするだけでも吐き気を催すものです。
歯磨きの際は▽歯ブラシはヘッド(ブラシ部)が小さく、柔らかいものにする ▽においの強い歯磨き剤は使わない ▽顔を下に向けて唾液を口にためない。 ▽奥から手前へ小刻みにかき出すように磨く など気をつけて下さい。
ほかにも、口を閉じて磨いたり、冷たい水を使ったり。どうしても歯を磨けないときは、こまめに水やお茶でうがいをし、洗口剤を薄めて使うのもよいでしょう。キシリトールガムでさっぱりさせるのも一つの方法です。 次に歯茎がむずむずするとのことなのですが、赤く腫れたり出血したりすることはないで
しょうか。歯茎からの出血が増えたという妊婦の声も聞かれます。妊娠性歯肉炎や妊娠性エプーリス(良性のできもの)など、妊娠中の歯茎のトラブルはよくみられます。
いろいろな大きさの歯ブラシのヘッド。
(上から)乳幼児仕上げ磨き用、コンパクトヘッド、通常のもの
歯周病菌には女性ホルモンの影響で繁殖するものがあり、女性ホルモンは歯肉の毛細血管に作用して歯周病の炎症を増大させるともいわれています。そんな女性ホルモンの分泌が、最も盛んになるのが妊娠期。さらに妊娠中はつわりの影響で、歯肉が炎症を起こしやすくなっています。
そして今、歯周病と低体重児出産や相談との関係が注目されています。歯周病に罹患した妊婦は、そうでない妊婦に比べて早産や低体重児出産の危険性が7・5倍高くなるという報告があります。歯周病による炎症で作られた物質が、血流を通して子宮に影響するためと考えられています。歯がうずいたり痛んだりするのはストレスですから、母体や胎児にとって好ましいことではありません。 その上、出産後は育児に追われ、なかなか歯科治療を受けられません。虫歯菌は人の口から別の人の口へ唾液を介して感染します。虫歯や歯周病を放置したままの口腔は細菌が多いので、つわりが落ち着いて安定期(妊娠5~7ヵ月)になったら歯科検診を受け、治療を済ませましょう。
歯科受診時は保険証と一緒に母子手帳も持参して、心配事は歯科医、歯科衛生士に相談してください。
お子さんの歯の始まりは、お母さんのおなかの中からです。妊娠2~3カ月で全ての乳歯の芽ができ、歯の質は妊娠中に決まります。栄養の過不足に気を付けて、バランスよく食事をとることが大切です。お母さんが口の健康管理を習慣づけることは、お子さんの虫歯予防にもつながります。家族で楽しい食卓を囲み、健康な歯で味わって食べる豊かな食習慣は、お子さんにとって、掛け替えのないプレゼントになるでしょう。無事出産されることを願っています。