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第19回 歯周病治療に糖尿病影響か

出血伴う場合血糖値下げて

質 問
奥歯がぐらぐら動き始めたので歯科医院に行ったところ、歯周病が進行していると言われました。糖尿病(HbA1c9%)にもかかっているため、歯周病治療の前に糖尿病治療も必要だそうです。
歯周病治療に糖尿病が影響するのですか。


回 答
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徳島県歯科医師会
淺原 洋士
第19回 歯周病治療に糖尿病影響か
出血伴う場合血糖値下げて

糖尿病と歯周病の関係は、最近いろいろなところで取り上げられています。しかし、すべての情報を一気に公開して、結果的に分かりにくくなっている場合もあります。今回は質問の内容に焦点を絞って説明します。キーワードは血管です。糖尿病は、血糖値がコントロールできなくなり上がってしまう病気です。血糖値の上昇は自覚がないため、糖尿病になっても気付きにくいのが特徴です。やっかいなのは、慢性的に血糖値が上がることで引き起こされる合併症です。

3大合併症は「糖尿病性網膜症(目)」「糖尿病性腎症(腎臓)」「糖尿病性神経障害(手足)」です。いずれも日常生活に大きな支障を来します。

目、腎臓、手足の共通点は、細い血管(細小血管)が分布していることです。高血糖が続くことで、細小血管が傷んでトラブルを引き起こしているのです。つまり糖尿病は、糖分をたくさん含んだ血液が流れることで血管にトラブルが生じる病気だということができます。では、歯周病とはどんな病気なのでしょうか。「歯の周りの病気」と表すように、歯そのものではなく、歯を取り巻く組織である歯茎や歯槽骨(顎の骨)にトラブルが出る病気です。トラブルの元は、歯の周りに付着する歯周病菌です。歯の周りの組織が歯周病菌によって炎症を起こし、その結果、歯槽骨が溶けて最終的には歯を失います。

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糖尿病のコントロールがされていない歯周病患者の口。
歯ぐきがかなり腫れている。

「歯茎から血が出ませんか?」というフレーズを聞いた方も多いと思います。歯茎からの出血は歯周病の初期症状の一つですが、歯茎は赤く見えることからも分かるように、細い血管が多く分布している場所です。つまり、前記のようなトラブルが起きてもおかしくないのです。

糖尿病の人がそうでない人より、歯周病が悪化しているという研究報告は数多くあります。2008年には、歯周病も糖尿病合併症の一つと考えることが提唱されています。歯周病も初期は自覚症状の乏しい病気なので、糖尿病の方は歯科医院で検診を受けることをお勧めします。さて質問についてです。一般的に、傷が治るためには新しい血管が作られる必要がありますが、それは口の中も同様です。血管が弱っている糖尿病の方は、傷の治りが悪いという特徴があります。歯を抜く治療が必要な場合、抜いた後は血の塊(血餅)が抜いた穴を覆い、それが歯茎や骨に変わっていきます。しかし、糖尿病がひどいと血餅が正常に形成されず、血が止まりにくくなって、最悪の場合はそこから感染症を引き起こすこともあります。血糖値のコントロールが良くない人は、出血を伴う治療に注意が必要です。

質問者の場合、出血を伴う治療はもう少しHbA1cの値が下がった状態で行うべきだと思われます。糖尿病にかかっている方は、治療前に病気の状態を歯科医師に知らせておくことが大切です。